「エゴグラム」という心理テストがあります。これは、アメリカの精神科医エリック・バーン氏によるパーソナリティ理論をもとにして作られています。人の心の状態を5つの側面から数値化し、その5つの側面のバランスを見ることで、心の全体像を把握しようとする心理テストです。
今回ご紹介するのは、この心理テストが想定している「心の中の5つの側面」についてです。心療内科医の芦原睦氏は、「人は誰でも心の中に5人家族を持っている」と説明しています。では、人の心の中には、どんな5人家族が住んでいるのでしょう。
1 頑固なお父さん
「頑固なお父さん」は、規則を重んじ、義務や責任を果たすことを重視します。物事を批判的に見たり、約束を守らないことは許せないと感じます。
2 世話好きのお母さん
「世話好きのお母さん」は、思いやりや愛情にあふれ、人を褒めたり話を聞いたりすることが得意です。何かをしてあげたいという気持ちが強く、人の失敗にも寛容です。
3 冷静でクールな大人
「冷静でクールな大人」は、感情よりも理論を優先し、客観的な分析や判断が得意です。
4 やんちゃで元気な子ども
「やんちゃで元気な子ども」は、自由奔放で好奇心旺盛です。物事をポジティブにとらえて、新しいことにもどんどんチャレンジします。
5 いい子になりすぎる子ども
「いい子になりすぎる子ども」は、協調性が高く、周囲に合わせて振る舞います。相手の顔色をうかがって行動し、悪いことが起こると自分のせいと思いがちです。
こうした5つの側面は、誰もが心の中に持っています。ただ、人によって、この5人家族のうち誰の発言権が強いかが違っていたり、5人家族のバランスが異なっていたりします。また、5つの側面に優劣はなく、それぞれ長所にも短所にもなりうる性質を持っています。
たとえば、「頑固なお父さん」は、高い理想や目標を持ち、リーダーシップを発揮できる一方、人に対して厳しすぎたり威圧的だったりするところがあります。「世話好きのお母さん」は、思いやり深く、人に対して優しい一方、過保護や過干渉になりやすく、押しつけがましいところがあります。「冷静でクールな大人」は、感情に左右されず、合理的な判断ができる一方、人間味がなく打算的なところがあります。「やんちゃで元気な子ども」は、感情や欲求を素直に表現でき、ユーモアや創造力に富む一方、気まぐれでわがまま、自己中心的で幼いところがあります。「いい子になりすぎる子ども」は、従順で慎重に行動する一方、自主性がなく依存的で、ひねくれているところがあります。
あなたの心の中では、5人家族のうち誰の発言権が強そうですか?
また、あなたの身近な人の場合はどうでしょうか?
心理テストは、自分自身や周りの人のことをより深く知る時の手助けになります。
また、夫婦関係などの二者関係についても、それぞれ心の中のだれが前面に出ているかを考えながら見直してみると、新たな発見があるかもしれません。
※参考文献「エゴグラム~あなたの心には5人家族が住んでいる。」芦原睦著